こんにちは、Dynamics ERP サポート チームの永吉です。
この記事では、Microsoft が Dynamics 365 Finance and Operations の調査に用いるシャドウ コピー環境についてご案内いたします。
はじめに
Microsoft は Dynamics 365 Finance and Operaitons のサポート サービスにおける調査の一環として、事象の再現及びトラブルシュートを実施する環境を用意する必要があります。この時、Shadow Copy Environment (シャドウ コピー環境) を作成することで、よりスムーズに調査を進めることが可能となります。この記事ではシャドウ コピー環境の機能や性質をご紹介いたします。
お客様のプライバシーの尊重
Microsoft はお客様のプライバシーを尊重し、シャドウ コピー環境に関する同意をお客様にて管理できるようにします。Mictosoft はお客様の同意なしにお客様のデータにアクセスしたり、お客様の環境を複製したりすることは決してございません。サポート リクエストを起票いただく際の事象説明欄に 「シャドウ コピー環境の作成に同意する旨」 と 「シャドウ コピー環境を作成するソース環境」 を記載いただくことで、問題解決時間の遅延をなくし、問題解決を迅速化することができます。同意は一時的なものであり、Microsoft のサポート チームに連絡することでいつでも取り消すことができます。
シャドウ コピー環境とは
シャドウ コピー環境とは、 Microsoft サポート チームが専用テナント内に作成する環境のレプリカです。シャドウ コピー環境を試用して、お客様の本番環境やビジネス オペレーションに影響を与えることなく、問題を再現して解決します。
シャドウ コピー環境について知っておいていただきたいことがいくつかあります。
- シャドウ コピー環境を作成するために別の環境を購入する必要はありません
- シャドウ コピー環境のデータベース サイズはお客様のストレージ上限に影響しません
- シャドウ コピー環境は、ソース環境と同じ地域にあります
- シャドウ コピー環境へのアクセスおよび使用は監査されています
- シャドウ コピー環境はサポート リクエストの問題解決を迅速化するためだけに使用されます
シャドウ コピー環境を作成できるソース環境
シャドウ コピー環境のソース環境は Microsoft が管理している環境のみとなります。
- シャドウ コピー環境の作成が可能な環境
- クラウドの本番環境
- 既存の Tier 2 環境
- Tier 5 環境などの追加で購入いただいた環境
- シャドウ コピー環境の作成が不可能な環境
- LCS で作成したクラウド ホスト環境
- VHD から作成した Hyper-V 環境
- オンプレミスの本番環境および検証環境
シャドウ コピー環境に含まれるデータ
シャドウ コピー環境は、ソース環境の全てのデータとカスタマイズが含まれています。
例外として、以下のデータは含まれていません。
- LogisticsElectronicAddress テーブルの E メール アドレス
- BatchJobHistory, BatchHistory, BatchConstraintHistory テーブルのバッチ ジョブ履歴
- SysEmailParameters テーブルの SMTP リレー サーバー
- PrintMgmtSettings, PrintMgmtDocInstance テーブルのプリント管理設定
- SysServerConfig, SysServerSessions, SysCorpNetPrinters, SysClientSessions, BatchServerConfig, BatchServerGroup テーブルの環境固有レコード
- DocuValue テーブルの添付文書。これらの添付文書には、ソース環境で上書きされた Microsoft Office テンプレートが含まれます
シャドウ コピー環境にアクセス権を持つユーザー
シャドウ コピー環境は、Microsoft の問題解決に寄与する個人にアクセスが制限されます。
シャドウ コピー環境の技術的制限
シャドウ コピー環境にはお客様のビジネス オペレーションに影響を与えず、安全に調査を進めるために以下の制限があります。
- 管理者を除くすべてのユーザーは無効に設定されます
- 管理者ユーザーはシャドウ コピー環境を作成したユーザーに設定されます
- すべてのバッチ ジョブが保留のステータスに設定されます
- すべてのユーザーのパーティション値が「初期」パーティション レコード ID にリセットされます
- Microsoft で暗号化されたすべてのフィールドは別のデータベース サーバーでは復号化できないためクリアされます。例として、SysEmailSMTPPassword テーブルのパスワード フィールドが挙げられます
- シャドウコピー環境自体のバージョンをアップデートすることはできません
- シャドウコピー環境にアクセスするユーザーはセキュリティで保護された専用のワークステーションからアクセスします
Microsoft のシャドウ コピー環境に対するデータアクセスの方法
- オンライン (アプリ経由) : システム管理者権限と同等
- データベース (SQL クエリ ツール経由) : すべてのテーブルへの読み取り/書き込みアクセス
- データベースへのアクセスには、Microsoft 内部における追加の承認が必要であり、必要に応じて管理・制御・付与されます。
- データベースへのアクセスは、標準のジャスト インタイム アクセス制御の対象となります。例えば、アクセスは時間制限され自動的に期限切れになります。
シャドウ コピー環境が維持される期間
シャドウ コピー環境は、作成から 7 日後またはサポート リクエストが解決された時点で期限切れになります。また、お客様が同意を取り消された時点で期限切れになります。
シャドウ コピー環境におけるカスタマイズ
- シャドウ コピー環境にはお客様にて作成したカスタマイズが、ビルドされたパッケージとして含まれます
- カスタマイズ プログラムをシャドウ コピー環境から削除できますが、再適用はできません
- カスタマイズ プログラムで作成したデータおよびカスタマイズ カラムのデータは削除できません
おわりに
以上、Microsoft が Dynamics 365 Finance and Operations の調査に用いるシャドウ コピー環境について紹介いたしました。
※本情報の内容(添付文書、リンク先などを含む)は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。より詳細な情報が必要な場合は、弊社テクニカル サポート, アカウント マネージャー, ソリューション アーキテクト, FastTrack までお問い合わせください。